知多市のリサイクル活動リサイクル活動には住民ひとり一人の協力が不可欠です。多くの自治体が「ごみの出し方」のポスターや 説明書を配布していますが、すべての住民がルールどおりに出しているとはかぎりません。 知多市は、住民主体のやり方と対話を行い、ルールの徹底を図りました。 問題の背景知多市は、名古屋市から20〜30キロ離れた知多半島北西部に位置する人口約8万人の市です。 昭和30年代の愛知用水の通水を契機に臨海部の埋め立てが始まり、中部電力ほかエネルギー関連企業が進出し、人口が倍増しました。 転入人口が50%を占め,さらに近年では、名古屋のベッドタウンとしても考えられるようになって、人口は増加し続けています。 他の自治体同様、人口増加はごみ問題の深刻化をもたらしました。可燃物の増加は市清掃センター内のごみ焼却炉を消耗させ、 最終処分場も満杯に近づきはじめました。運動公園近くのゴミ収集所への量も増大し,海岸線の道路周辺へのごみ投棄も激しくなり、 年末年始には二階の屋根までとどくほどごみが積み重なる場所がでてきました。行政だけでなく、住民にとっても、 ごみの減量化とルール遵守が急務の課題となりました。 知多市にあった方法の模索ごみの分別と資源化は増え続ける廃棄物への対策のひとつです。しかし、リサイクルのしくみが整わないまま、 全国の自治体が資源回収に乗り出したため、回収資源の量が増大し、資源価格は低下しました。 また、出された資源は洗浄が不十分だったり、分別がされていなかったりと、質も悪いものでした。 このため、多くの自治体では行政が人手とコストをかけて何とか処理をしていますが、 回収業者に引取り料金を払ってもっていってもらう「逆有償」が当たり前になっています。 このような状況の中で、知多市の職員は、「行政が人手とコスト(つまり税金)をかけて全てをすることがよいことか。 住民にも協力してもらうことが大切では?」と考えました。しかし、住民の協力を得ることは容易ではありません。 そこで、区長の協力を得ながら、試験地区での研究を開始しました。 【活動の経緯】
知多市方式の誕生知多市方式とは、市民に「資源をきれいに出す」ための手間をお願いする資源回収の方法です。 平成4年10月にモデル地区で知多市方式資源回収を開始しました。資源回収品目は9品目、回収は月1回でした。 浜松市や名古屋市が20品目以上を分別回収しているのに比べると、知多市の分別はごく普通の自治体のレベルです。 缶は飲料用に限って回収しています。(現在はペットボトル、トレーなどが加わり、12品目となっています。) このような方式をとったのは、住民にわかりやすいこと、住民の協力が得やすいこと、住民の協力が長続きすることを重視したためです。 分別を細かくするとわかりにくいし、どう分別してよいのかわからないものが増えてしまいます。 これでは住民も適当に洗って出してしまいかねません。回収ステーションや回収用具をいつもきれいにすること、 袋などに入れずに裸で出してもらうことも、住民の意識を高める上での工夫です。 知多市方式の最大の特徴は、住民の協力によって回収資源の質を高めたことです。 市職員はこの考え方を「我々は資源ごみを回収しているのではなく、工業原料である資源を集めていると思っているんですよ。」 と述べています。実際、ペットボトル、トレー以外は業者が'購入'しており、取り扱わせてほしいという引き合いもあるようです。 住民の協力は「きれいに出す」ことだけではありません。約100世帯ごとに回収ステーションが設置されていますが、 月1回の回収日には5人程度の当番が分別の指導と管理をします。当番の負担は、年に1〜2回程度です。 ある地区では、子供の登校時間にあたるため当番ができないとの意見が母親から出されました。 この地区では区の役員が代行することで対応しています。こうしたやり方は、地区それぞれに任されています。
住民の協力には見返りも住民の協力を得たおかげで、知多市が回収する資源は業者が積極的に取り扱ってくれます。 このため、回収した量に応じて、各地区に奨励金が支払われるしくみになっています。 奨励金は、市の回収資源の売上金に市からの報奨金(キロ5円)を加えたものです。 この奨励金を地区でどのように使うかも、各地区に任されました。 みんなの努力が目に見える成果として還元されていることも、知多市方式が継続できている一因だと考えられます。 逆に、汚れたビンや缶などが混じっていると、市は区長に連絡し、さらに汚れた回収物の重さは 報奨金算定から差し引かれるので、全員協力の必要性が見える方法でもあります。 全市実施へ 〜住民本位の説明会〜もちろん、知多市方式が最初からうまくいったわけではありません。 モデル地区でも当初はきちんと洗浄しない住民が多かったようです。このため、始まったころは、 当番の人がチェックして汚れているものをきれいに洗っていました。 モデル地区の活動が軌道に乗るのを見定め、市は、平成5年4月に全市実施に向けて説明会を開催しました。 そもそもモデル地区での実施の際も区長とよく話し合い、住民説明では区長にリーダーシップをとってもらいました。 全市に広げるにあたっても、半数の区長のところへ協力依頼をした上で説明会を始めています。 説明会の開催数は平成9年5月までに374回を数え、延べ14250人が参加しました。区長への主旨説明、役員説明、 住民説明に分け、住民側の都合のよい日時と場所を指定してもらい、行政が出かけていって説明しました。 市職員2人1組で、わかりやすいビデオをつくって対応しています。わずか3名を相手に説明会をしたこともあったそうです。 また、資源回収が始まると、市職員は回収ステーションに出向き、住民といっしょになって分別・回収を手伝いました。 これらの努力の積み重ねにより、平成9年3月、全市で知多市方式の資源回収が始まりました。住民の協力は今も継続しており、 回収資源の売上げも順調です。逆有償の自治体が多い中、知多市の資源回収は成功しているといえるでしょう。 「洗って出す」ことが習慣化したため、祭りなどの行事の際もごみを分別・洗浄して出すようになったそうです。
平成7年4月 リサイクルプラザ開館
住民と住民、住民と行政のパイプ役へ知多市で資源回収が軌道にのっていることは直接の成果ですが、知多市方式のリサイクルは別の効果も生み出しました。 ひとつは、回収ステーションが地区の人々の新しい井戸端会議の場所になったことです。 旧集落の地区でも住民どおしのつながりは希薄になりつつあります。 住民には負担と思われた当番制が地区内の情報交換を活性化させるきっかけになりました。 回収の難しい一人暮らしの老人を訪ねることで、福祉的な役割も果たしているようです。 2つめは、行政と住民とのコミュニケーションも円滑になったことです。 ごみ問題に取り組んだ区長さんたちは、区長を退任しても行政担当者と親しくつきあっていますし、 行政側も未だに年1回以上は回収ステーションに出向いて住民といっしょに作業をしているそうです。 このような関係は、ごみ問題以外でも住民の協力が得られる可能性を高めています。 * 以上の内容は,本プロジェクトのメンバーが知多市担当者からうかがったお話をまとめたものです。 * 知多市のホームページにも紹介があります。 |
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