リスク・コミュニケーションの7つの原則
■ リスク・コミュニケーションの基本的ルールは、多くの事例研究の中から見出されてきました。
実践をする前にはいつも、この7つの原則を思い出すようにしましょう。
1.市民団体や地域住民等を正当なパートナーとして受け入れ、連携すること
- 民主的な社会におけるリスク・コミュニケーションの基本的な信条は、人々やコミュニティには彼らの生活や財産、
彼らが価値をおく事柄に影響を与える決定に参加する権利があるということです。行政や企業は、
今まで市民団体や地域住民等との意見交換や連携が不十分でした。これからは、行政施策や企業活動を円滑に行うために、
市民団体や地域住民等に信頼され、協働関係(パートナーシップ)を築いて地域環境の改善活動を実施する考えをもつことが重要です。
2.コミュニケーション方法を慎重に計画をたて、そのプロセスを評価すること
- リスク・コミュニケーションは注意深く計画されていれば成功します。リスク・コミュニケーションを実施する場合には、
場所、相手、説明内容、方法などを注意深く決めるとともに、信頼を深めるためには実施の結果だけでなく、
実施のプロセスが非常に重要なことを認識する態度が必要です。
3.人々の声に耳を傾けること
- 人々の意見に耳をかさなければ、彼らにあなたの言うことを聞いてもらうことは期待できません。
コミュニケーションとは双方向の行為です。適切なコミュニケーションを図るためには、自分たちの考えや方針だけでなく、
幅広い異なる人の意見を謙虚に聴き、理解に努める態度が重要です。
4.正直に、率直に、開かれた態度で行うこと
- リスク情報を伝える際には、信頼と信用は最も価値のある資産となります。
行政や企業には公表できる情報とできない情報がありますが、これらを事前に整理し、公表できるものは積極的に開示し、
できないものはごまかさずに理由を十分説明できるようにすることが重要です。
また、面子や縄張りにこだわらず、誠実、前向きな態度で対応することが重要です。
5.他の信頼できる機関と調整し、協力すること
- 他者との連携はリスク情報の伝達の手助けとなります。大学の学者、学識経験者、
国の研究機関などの公正な第三者に協力してもらうことは、情報収集だけでなく、信頼感・公平性を高めることに役立ちます。
6.メディアの要望を理解して応えること
- メディアはリスクに関する情報の主要な伝達者です。メディアは論点の設定や結果に重要な役割を果たします
。社会的影響の大きいマスコミとよい関係を構築するため、マスコミの役割や立場を理解し、取材に協力して前向きな発言をすることが必要です。
7.相手の気持ちを受け止め、明瞭に話すこと
- 技術用語や略称は専門家の便法としては有用ですが、一般大衆とのコミュニケーションを成功させようとすると障害になります。
リスク・コミュニケーションを実施する際には、謙虚さをもって相手の話を聴き、
相手の関心事や理解度に応じてわかりやすく話すことが重要です。特に、厳しい質問や意見に対しても、
それを一旦受け止めてから、自分の前向きな意見を謙虚に、かつ明確に述べることが重要です。
参考文献:
Covello, V. & Allen, F. Seven Cardinal Rules of Risk Communication,
U.S. Environmental Protection Agency, Office of Policy Analysis, Washington,
D.C., 1988.
社)日本化学会リスクコミュニケーション手法検討会 浦野編著「化学物質のリスクコミュニケーション手法ガイド」ぎょうせい
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