科学者や技術者が話す場合
組織が直面しているリスクや危機の説明では、科学的技術的な専門知識が必要になる場合があります。
しかし、地域の人々や記者、組織の経営層ですら、専門的な事柄を理解できないかもしれません。/
そのため、あなたは、技術的な説明の責任を担わなければなりません。技術的状況がどのような影響を及ぼし得るか、
そして住民の健康や環境にとってどのようなリスクがあるのか、を住民にわかりやすく説明する解説者にならなければなりません。
やってはならないことは、住民の不安感を強めるだろうと考えて、情報を出さないことです。
住民の不安は、リスクにさらされているという事実よりも「知らされない」ことによって増幅します。
住民には知る権利があり、彼らはよく知った上で態度を決めようとすることを忘れないようにしましょう。
人々に情報を伝えるとき、専門家としてあなたが陥りやすい問題があります。
第一に、あなたは専門用語を使ったり、専門的な表現にこだわったりする傾向があります。
しかし、人々にとってあなたの言葉は馴染みのない外国語のようなものです。
第二に、あなたはデータを示したり、リスクの数量的表現にこだわったりする傾向があります。
しかし、人々にとって知りたいことは、データではなく、「自分たちのリスクはどの程度か、
軽減できるのか、軽減するにはどうすればよいのか」といったことです。
専門用語を使わなくても、人々はあなたを能力のある専門家だとみなします。
数字や科学的事実を説明しなくても、人々にリスクについて伝えることはできます。
'わからない'言葉を使ったり、'わからない'内容を長々しく説明したりすると、
人々は「あなたは話したくないのだ」と思ってしまいます。あなたに対する信頼感を低下させないために、'わかりやすい'説明を心がけましょう。
事前
- 様々な受け手がいることを知って、対応を考えていますか?
- 受け手のニーズと関心事を調べていますか?
- 計画をたてていますか? 誰がどのような役割を果たすか、権限はどこにあるかを明確にしていますか?
- 組織内の技術やコミュニケーションの専門家の知恵を借りましょう。
- 住民やメディア、特にテレビ局にどう対応するかを訓練するためのコースを受講しましょう。
直前
- あなたが話そうとしているリスクについて、理解を深めましたか?
- 一番伝えなくてはならないことは何かについて評価を行いましたか?
- 情報はわかりやすく正確に整理していますか?
- 発表の練習をしましたか?暗記はしないようにしましょう。あなたの話し方の欠点を理解しておきましょう。
- もし可能なら、取り上げなかった話題についても資料を用意しておきましょう。
- 必要に応じて、組織の経営層に発表内容の承認を求めましょう。
期間中
- 地域住民に話す場合、メディアに話す場合も読んでおきましょう。
- 聴衆の関心や知識レベルを理解していますか?
- 取り上げる事柄だけでなく、関連する背景情報も説明しましょう。
- 感情的にならず、理性的に対応しましょう。
- 日常使う言葉で話しましょう。専門用語や略称は使わないようにしましょう。
- 実際の数値の入ったデータシートに解説を加えながら情報提供しましょう。
- 短く平易な文を使って、正確にはっきり話しましょう。
- あなたやあなたの組織の分析や決定の筋道を説明しましょう。ただし、それが唯一の考え方であると決めつけないようにしましょう。
- 類推、例示、逸話は注意深く吟味して使いましょう。
- 数字を示す時には図表を用いるとよいでしょう。
事後
- コミュニケーションの効果について、広報担当者や周囲の人々から意見を求めましょう。
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