クライシス・コミュニケーションの進め方1.リスクを発見したりクライシスを予知できる能力をつけましょうクライシス・コミュニケーションを検討するには、まず、あなたの組織はどのようなクライシスに直面する可能性があるか、 つまりクライシスの予知ができなければなりません。 表1は不測の事態を招く要因と引き起こされうるクライシス局面の例です。あなたの組織にはどれがあてはまりますか? 表1 不測の事態を招く要因と惹起されるクライシス局面の例
2.クライシスを回避する行動をとりましょうクライシスを回避するために、次の3点を実行するようにしましょう。 1.クレームには迅速な対応と面談を実行する
誠意の証は'スピードと面談'です。
2.部下、同僚とのコミュニケーションを日ごろから良好に保つ
内部告発の大半は社内コミュニケーション不足に起因しています。
3.ビジネス行動は「会社の視点」だけでなく「社会の視点」でも見る
会社の常識は社会の非常識であることも認識しましょう。
3.マスコミ対応能力をつけましょう表1に示されるように、クライシス局面に共通しているのがマスコミの批判報道です。 クライシス・コミュニケーションではマスコミ対応が重要な役割を果たします。マスコミ対応の一般的なポイントは次のとおりです。 1.取材を逃げてはならない。むしろ"堂々と"応じること
あなたの組織が取材に応じなくてもマスコミは報道したいことを報道します。どうせ報道されるなら、組織の言い分をきちんと伝えるチャンスと考えましょう。
2.電話取材に"即答"しないで、折り返し返事をすること
組織から提供される情報に矛盾があってはいけません。「こちらから折り返し回答します」と伝え、説明内容を直ちに吟味しましょう。そして、できるだけ早く回答しましょう。
3."話せる内容"と"話せない内容"を明確に区別して話すこと
ゴマカシとウソはマスコミの不信と批判を増幅させます。緊急時には初期段階での情報不足がつきものです。まだわかっていないことを憶測や推測で話すことは避けましょう。
4.法的見地や企業論理にたったコメントは述べないこと
記者の視点は、その問題についての社会的責任や道義的責任へのコメントです。法的な問題や企業の立場を強調すると批判的報道になりがちです。特に、消費者に関係する問題の説明にあたっては注意しましょう。
5.ポジションペーパーを必ず渡すこと
ポジションペーパーには、問題をめぐるさまざまな見解や事実関係、問題の経緯などについてわかりやすく解説し、組織の対応や見解・主張点をまとめます。記者が誤った記憶や一方的な見解に基づいて報道することを防ぐことができます。
6.緊急記者会見を有効に活用すること
企業姿勢の透明性が訴求できますし、説明責任を果たすことにもなります。ただし、時間的余裕があれば、会見前に専門家のアドバイスを受けましょう。
4.クライシス・コミュニケーションに対する社内の意識を高めましょう。クライシス・コミュニケーションは、社長や広報の担当者だけの仕事ではありません。 また、不測の事態が発生してからでは情報の混乱の中で適切に対応できない可能性があります。 日ごろから、組織の全員がクライシス・コミュニケーションの重要性を認識し、緊急時の対応能力を養っておく必要があります。 次の5項目は、数多くの企業で実際に採用され、実施されて効果をあげているものです。
1.不測の事態の未然防止のために「潜在リスクの洗い出し」を実施する
2.幹部社員の危機管理の知識と意識を高めるために「危機管理セミナー」を実施する 3.初期対応の判断ミス防止策として「シミュレーション・トレーニング」を実施する 4.経営層のマスコミ対応力を高めるために「メディアトレーニング」を実施する 5.全社的な危機管理対応力を高めるために「危機管理マニュアル」を作成する 5.緊急時の社内体制づくりをしましょう。不測の事態が発生してから緊急時対応組織を発足させようとすると、対応が後手後手になってしまい、 十分なクライシス・コミュニケーションを実施できません。そこで、平常時に緊急時の社内体制として「危機管理委員会」を設置し、 定期的に緊急時対応について議論を重ねておくことが有効です。 「危機管理委員会」は、平常時は社内の潜在的リスクを洗い出したり、他社の例を教訓として学んだり、 危機管理マニュアルをつくり、緊急時対応訓練をしたりします。緊急時には、対策本部のスタッフとして先頭に立って危機対応をし、 クライシス対応戦略・施策の立案と提言を行います。 6.外部の専門家との協力関係をつくりましょう。不測の事態が起こったとき、組織はどうしても保身に走ってしまいがちです。 本来やるべきクライシス・コミュニケーションを実施するには、外部専門家からの批判的な助言が役立ちます。 法律問題だけでなく、記者会見の仕方や広告の出し方など、コミュニケーションの専門家のアドバイスが不可欠です。 また、大学などと連携していれば、第三者的立場から科学的な見解を出してもらえます。 |
| 章の先頭へ | | 前へ | 次へ | | 次の章へ | トップページへ | |