認知のバイアス

 私たちは、様々な情報や記憶を使って物事を知覚したり、判断したりしています。 例えば、家族と話をしているときのことを考えてみましょう。 あなたはその家族がどんなことを考えているのか、どんな状態にあるのかを話の内容だけで判断しているでしょうか?  顔色や声の調子なども気にかけるでしょうし、昨日どんな調子だったかやこれまでどうだったかといったことも思い起こしながら判断しているかもしれません。 あなたが忙しければ、話の内容を全部聞かないで判断してしまうかもしれません。 このように、私たちは情報を取捨選択したり、特定の情報や記憶に影響を受けたりします。 このような知覚や判断の特徴を認知のバイアスと呼んでいます。


 認知のバイアスが生じる原因は何でしょうか? 第一は、情報を処理する能力に限界があるためです。 入ってくる情報をすべて処理していると、すばやく判断することができない可能性があります。 また、先入観に囚われたり、自分に都合のよいように解釈したりすることもよくあります。 特に、リスクを考える上で重要な確率(物事の起こりやすさ)は正確に判断することができません。 第二に、情報処理能力に限界があるため、最適解に至らないまでも、そこそこ満足のいく判断を行うとします。 特に、私たちは早く知覚・判断するために、使う情報を節約する傾向があり、これをヒューリスティックス (単純化のための戦略または経験則)と呼んでいます。ヒューリスティクスはたいてい素早くそこそこ合理的な判断をもたらすので 、無意識のうちに使ってしまっています。しかし、いわば"正攻法"ではない判断の仕方なので、状況によっては誤った判断を導いてしまいます。




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